きっとセンサーがうまく反応しなかったのだろう。
しかし、当然センサーが反応しなかった時のために手動で流せるスイッチもある。
それでもうんこは流されていなかった。
どうしてうんこは流されなかったのだろうか。
用を足し終わり、立ち上がって下着や衣服を整える間にセンサーによる自動水洗が行われる。
トイレの水が流れる音は当然それなりの音量なので、流れたか流れなかったかはわかるだろう。
センサーの不具合で流れなかったのであれば、手動のボタンを押すだろう。
仮に手動ボタンも不具合だったとして、犯人はうんこを放置することを決意して個室から出たのだろうか。
それはとてもリスキーで、勇気のいる行為だったのではないだろうか。
職場のトイレで、いつ誰が入ってくるかわからない状態で、うんこを放置してその場を去る。
とても勇気がいるはずだ。
うんこを放置して個室から出るとすれば、まずトイレ内に人がいないのは絶対条件だろう。
トイレの個室は4つ。
それなりの人数が働いている職場なので、トイレには入れ代わり立ち代わり人が入ってくる。
トイレ内の人の動きは息をひそめて耳をすませばある程度把握はできる。
いまトイレ内の個室に自分以外に人はおらず、また手洗いスペースにも人がいないか。
大体は把握できるが、あくまでも大体。
他の人も個室で息をひそめていたり、手洗いスペースで静かに鏡を見つめているとかだと勝率は下がる。
万が一、物音がしないため誰もいないと踏んで外へ踏み出したものの
他の3個室が息をひそめてケイタイをいじっている人で埋まっていたとして、
更にトイレ前で個室が空くのをとても静かにまっている人がいたとしたら。
終わりではなかろうか。
人として、かなり終わりではなかろうか。
私はうんこを視認した瞬間その場を逃げ出したのだが、
誰かが流してくれたんだね。
よかったねうんこ。