2015-01-31

頭の良い友人の話

僕には友人がいた、いや、今でも居るんだと思う、消息は知らないが。

中学が一緒だったが、彼はとてもウィットに富んだジョークを放つ男だった。

僕なんかではとてもかなわない人間だった。ここではAとしよう。

でも成績は悪かった、はっきり言って底辺だった。当時成績はそれなりだった僕が軽く教えればすぐに飲み込む。なのに何故だろう。

頭の回転は凄く速い。「かけあい」をしていてとんでもない発想からくる知性を感じる返答の連続だった。

ある日、遊びに来いよ、とAに誘われ、彼の家に訪問し、その疑問は氷解した。

川沿いの狭い路地のAの家は、散らかった居間、だけではない。

ウォシュレットが普及し始めた時勢に未だ和式便所、小汚いハムスターの籠(エサやりわすれてたら共食いしてたよ、と彼は笑って語った)。

ああ、分かった。Aはそういうランクの人なのだ。Aは、というよりAの世帯は。

しばらくプレステ2メタルギアソリッド2を遊んでいた時、インターホンが鳴った。ガス会社の人が来たらしい。

玄関からAの母親の声が聞こえた。「あと3日で息子の給料が入りますので」と。

Aは確かにバイトをしていた。Aは笑ってこう言った。「俺がなんとかしなきゃな」。

彼は本当に頭の良い人間だった。風の噂では最近パチンコ屋で働いているらしいが、地元を離れている僕としては調べようもない。

もし彼がどうにかして学ぶ時間もっと設けることが出来れば、今の僕なんかよりずっと優秀な地位にあっただろう。

陳腐な教訓だが、子供教育に金をかけることを惜しんではいけないと思った。独身だけど。

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