2008-11-23

少年ジャンプの「悪」の表現

雑誌としての傾向がぼんやりと見える。

相手が自分と同じ姿形をして、コミュニケーションを取れる存在であるにも関わらず、その相手の命を奪う事に何の躊躇も無いという点で一致しているように感じる。中にはそれが先天的レベルで定着しているようなのも。

  • ブリーチ
    • 悪役としては、元死神藍染惣右介一派と彼らに協力している虚(ホロウ)一派が挙げられる。前者人間をどのように認識しているかは知らないが、目的達成のために長い間周囲の同僚を欺き続けたり、数万人単位の人命を躊躇無く奪おうとしている点から推して知るべし。後者は元々の設定上、人間の魂は食料のようなものと思われる。どちらも人間自分と対等の存在だとは微塵も思っていなさそうだ。
  • 脳噛ネウロ
    • 悪役は「シックス」。自らを人類よりも進化した種であると嘯き、人類を淘汰(殲滅)せんと企む。彼にとって人類邪魔以外の何物でもなく、利用こそすれ「別に死んでも構わない」的な扱いしかしない。ネウロを懐柔するために捕らえた大勢(数十名以上)の人々を「つまらん」の一言で即座に爆殺した事もあった。自分の信奉者が苦悩と苦痛にゆがむ顔を見るのが何よりも大好き。トップがこんなんでよく組織を維持出来てんなあ。
  • PSYREN
    • 現在判明している悪役は「W.I.S.E(ワイズ)」と呼ばれる目的不明の集団。その上には「元老院」というのもあるらしい。彼らが登場するまでは、主人公達が戦う敵といえば、理性も無く本能的に人間を攻撃しようとする異形の怪物が多かった(後から人間の形や記憶を持ち合わせている者も登場する)。その後、彼らを作り出した存在として「W.I.S.E」が登場する。彼らは圧倒的なパワーで人類を、まるで有害鳥獣駆除感覚で攻撃してくる。その一派の一人が、まるで小学生キン肉マン超人を空想するような感覚人間を怪物へと改造している描写も見られた。
  • ハンター×ハンター
    • 悪役は「王」と呼ばれるキメラアント(食した生物遺伝子を子孫に繁栄させられる巨大な虫。人間を多数捕食した女王から生まれた)。少なくとも登場直後は、人類に対して家畜程度の認識しかしていなかった。最近は違うと自ら明言しているが、あくまでも人類を食料として管理する事を前提としたもの。
  • ワンピース
    • 天竜人(てんりゅうびと)と呼ばれる超法規的特権階級雑誌では煽り文で「悪」と明記されていたのでいずれは主人公達と衝突するのは間違いないだろう。彼らの前ではどんな存在であろうと人権など無に帰し、彼らの如何なる暴虐も止められない。仮に彼らに暴力でも振るおうものなら、世界を統治する「世界政府」の「海軍」全戦力が殺到する事態となる。作品中では多数の奴隷を引き連れ、体格の良い者を這いつくばらせて馬の代わりにするという悪趣味全開な姿をさらしている。おまけに、下賤の者と同じ空気を吸いたくないという理由で頭から潜水服のようなヘルメットをすっぽりと被っている(脱がされても窒息するわけではない)。

我々現代の日本人でも、命を奪うのに躊躇しない生物はそれなりにある。ゴキブリ、蚊といった害虫全般、家畜など。植物に至っては生物である事すら意識していない場合も多いと思う。しかし、もしそれらが全て人間の姿をしていて、我々と同じように言葉を交わし、知性や感情を持ってたら、それでも我々は躊躇なくそれらの命を奪えるだろうか?その時に我々の中に生まれるためらいを易々と踏み越え、踏みにじる事が出来るからこそ、彼らは「悪」である事が出来るのだと思う。逆に言えば、それほどまでに突き詰める必要に迫られるほどに、日本漫画の表現は深くなっているんだろう(その是非はさておき)。

追記

上記で挙げたタイプの「悪役」ってのは、説得とか良心に訴えるという手段が全く通用しない。だからこそ暴力を使う(戦う)事でしか止められないわけで、結局のところ「悪の表現の進化・多様化」とは「主人公達が暴力を使う事の正当性の進化・多様化」の裏返しなんだろうな。

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