はてなキーワード: 本当のこととは
私は幸いだった。優しい家族の元に生まれ、好きなことを職業にでき、愛する妻と結婚し、そして偉大と呼ばれる功績を残すことができた。本当に素晴らしい人生だった。しかし、一つだけ心残りがある。それは妻のことだ。妻は離婚歴があり、夜の仕事をしていた。それを理由に妻のことを悪く言う人間がいる。偉大な功績を残した私には相応しくないと。それが唯一の失敗だったと。妻は気にしていないと言ってくれている。だが、やはり時より辛そうな顔を覗くことができる。そんな妻を思うと、私はを言わずにはいられないのだ。本当のことを。妻の偉大さを。私の本当の功績のことを。
人々は、私が妻を、離婚歴のある、夜の仕事をしていた妻と結婚したことが、偉大な功績を残した私には相応しくない、唯一の失敗だったと言う。しかし、本当に偉大な功績を残したのは妻だったとしたら?私は数式に置き換えただけだとしたら?彼らはどのように言うだろうか。
確かに妻は教育は受けていなかったが、抜群の知性を持っていた。人々が何を考え、望んでいるのかを瞬時に理解し、それを与えた。だから、夜の世界でもすぐに頂点に上り詰めることができたのだろう。それは対人関係以外でも明らかだった。彼女の発言は常にスマートだった。彼女に何かを聞くと、的を射た、意図を見越した、シンプルな回答が返ってきた。どんな複雑で煩雑な問題でも、彼女に聞くとシンプルでスマートな形式になって返ってくるのだ。そして、それはどんな難問でもだった。それを彼女が理解できる日常言語に落としこめさえすれば、彼女は当たり前のことのように即答できた。多くの学者が頭を悩ませ続けた問題にもだ。
ある日私は、彼女と昼食後の穏やかな時間を過ごしているときに、今私が、そして世界の研究者達が、研究している分野について、日常言語に落とし込んで話していた。何かを期待してなかったわけでもないが、何かを期待していたわけでもなかった。さしもの彼女も無理だろうと思っていたからだ。だから、ヒントになることでも聞ければ幸運と、私は軽い気持ちで話していた。私が話し終えると、紅茶にお湯を注いでいた彼女は首を傾げ、「うーん?」と少し考えている様子だった。彼女が考えるのは珍しい。というより、私は初めて見た。それ程彼女は頭の回転が速かったから。
そして紅茶の葉が開き、淹れ終わると、彼女は考えるのをやめて、カップの準備をし始めた。やはり彼女にもわからないことはあるのだなと、そんな当たり前のことを今更思っている自分に気づき、おかしくて笑っていると、カップとティーポットを持ってきた彼女が、私の前にカップを置き、紅茶を注ぎながら「砂糖はいくつ?」とでも聞くように気軽さで言った。「ねえ、さっきの話だけど―――」
それが私が残したとされる偉大な功績だ。私は彼女の言うことを数式に置き換え、証明し、発表しただけなのだから、本当に偉大な功績を残したのは、誰かだなんて言うまでもないだろう。ただ、これからは一つだけ訂正して頂きたい。私が妻と結婚したことは唯一の成功だったと。それが私の本当の功績なんだから。
ようこそ、はてな匿名ダイアリーへ。
この文章はネタばらしだから、まず読んで落ち着いて欲しい。
うん、「ネタ」なんだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
でも、このショートショートを読んだとき、君は、きっと言葉では言い表せない「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい、そう思ってあのショートショートを書いたんだ。
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なんか、本当のことだと思ってる人もいるかもしれませんが、もちろんフィクションです。
途中、時制がおかしくなってるので気付いてくれると思ってました。
あ、今年は義理すらなかったというところだけは本当です。
昨日、アイマスを買いに行ったら売り切れてました。
これからも、「ありえない日常」をキーワードに書こうと思います。
*名前は、男女どちらとも取れる一文字の漢字としか設定してなかったけど、真っぽいらしいのでそういうことにしました。
「先輩、ありがとうございました」
まるで部活の挨拶のように声をそろえて言った後輩くんたちは、ドアのベルを鳴らして軽やかに出ていった。ご丁寧に手までつないで。わたしは軽く手をあげて、氷が溶けきってただの砂糖水のようになってしまったアイスコーヒーを一口飲んだ。
「ちくしょう」
そう小声でつぶやいてみる。あんなにも普通に青春できるやつだったなんて。彼は私のことを先輩なんて呼ぶけれど、実のところわたしは先輩でもなんでもない。彼が名付けた、訳ではないけれど、彼の一言で広まってしまったニックネームのことが、わたしは嫌いだ。だいいち、彼とは誕生日も一年と違ってはいない。
「ちくしょう」
もう一度そうつぶやいて、タバコに火をつけようとしたら店員に注意された。そういえばここは禁煙だった。ごまかすようにアイスコーヒーのおかわりを頼む。ここのアイスコーヒーは、はっきり言ってまずい。それなのになぜここをよく使うのか、彼にきいてみたことがある。そうしたら、人がいないことと、禁煙であること。喫煙者であるわたしを目の前にして彼はそう断言した。万事においてそういうやつなのだ。
それなのに、わたしがタバコをやめたことを報告しても、そうですかの一言ですます。とんだにぶちんやろーだ。
ともちゃんが彼のことで相談してきたときは正直にいってびっくりした。彼は見た目はかわいいのだけれど、偏屈で論理家で、おまけに説教くさい。友達付き合いをするにはいいけれど、おおよそ女の子にもてるタイプではない。少なくともライバルはいないと安心していたのに。彼がともちゃんのことを気にかけているのは気付いていたけれど、ともちゃんは彼のことなんかハナにもかけないだろうなと勝手に思い込んでいた。
ともちゃんの切実な訴えをきいているうちに、ちょっと心配になって彼の性格のことを言ってみたら、先輩も彼のことが好きなんですか?だなんて言われてしまった。外れではないけれど、当たりでもない。そういう意味で言ったわけじゃない。
結局ともちゃんの願いを聞き入れて、想定とは少し違ったけれどこうしてうまくいった。ともちゃんが電話先で本当のことを言うだなんて思ってもみなかったし、ましてや外出していたともちゃんがここまで来て、二人でデートに出かけるだなんて、そんなことあっていいんだろうかとすら思うけれど。
「ま、いいんだろうな」
と口にだす。でも。昨日の今日で呼び出されて、はりきって準備をしたというのに。めったにかかってこない彼からの電話で、年甲斐もなく初デートかな、だなんて思ったりして。あまりにも滑稽すぎる。
彼は、ともちゃんがくるまでの間、おちつかなさそうに、でも、うれしそうにこう言った。
「全部はっきりわかって良かったです」
でも。わたしは甘いだけのアイスコーヒーを飲みながら、一人つぶやく。
「君は本当の真相にたどり着いたわけじゃないんだよ」
M先生のお葬式が終わり他の片付けに手が要るのかS子と相談したけどわからない。N先輩に聞くと君たちは学部生だからもう帰っていいと言われた。S子と帰ることにした。晩秋らしい小雨が降っていた。S子は僕に傘に入る?と聞いた。あまり考えもせず相合い傘で駅に向って歩いた。ママが傘持って行きなさいって言ったから持ってきたんだけど本当に雨になったわ。M先生って39歳だったんだって。中学生の娘さんがいるのよ。奥さんは高校の社会科の先生しているんだって。S子は何度も繰り返されてきた伝承のようにM先生のことを話し続けたが、突然立ち止まって、K君、U子さんと別れたの?と聞いた。
別れたよ。夏休み前。就職のことでもめちゃってさ。S子はそうなのと関心したように言ってから進学しないの、K君は進学するとばかり思っていたのに。彼女は僕を不思議そうに見てから、私も就職しようかな、それとも結婚しようかなと言った。
しばらく歩いて駅が見える坂道の所で僕は思い出したように誰と結婚と聞いてみた。S子はまた立ち止まって僕を見て。K君と結婚しようかなと思ってると言った。ちょっとばかり驚いた。冗談を言っているのだと思った。おなか空いたね。
駅前のお蕎麦屋さんに二人で入って二人ともたぬきうどんを頼んだ。お腹が温まると生きてる感じがする。食べ終えた後S子は細かいお金が無いから私に払わせてと言った。おごってもいいんだけど。
駅に着いて僕が吉祥寺まで二人分の切符を買って一枚彼女に渡すとプロポーズ受けてくれた?とS子は言った。プロポーズ。僕はなんのことかわからなくて黙っていると彼女は傘を落として僕に抱きついた。そして泣いた。20分くらい泣いた。僕は時々駅の時計を見ていた。先輩たちが来たらなんて言うだろうと思ったけどお葬式の帰りだしそんな気分も変じゃない。ぐるぐるとそんなことを考えながらS子が僕と結婚したいって言ったのは本気だったのかよくわからなかった。
S子が泣きやんでハンカチで目を拭いた。前髪に隠れているけど目の回りを赤くしたS子の顔は少し可愛そうな感じがした。目の腫れた感じが引くまで待ったほうがいいかもしれない。コーヒー飲んでいく?と聞いてみた。彼女は頷いた。
スパゲッティの匂いのする薄暗い駅前の喫茶店に入った。店員のおばさんが不審げにやってきたのでブレンド二つと告げた。S子はだまって俯いたままコーヒーを口にしなかった。鳩時計が六時を告げたのを僕は聞いていた。コーヒーも冷め切ったので行こうかとS子に声をかけるとS子は俯いたままU子さんとセックスした?と聞いた。しなかったよと僕は何も考えずに素直に答えた。催眠術にでもかかって本当のことしか言えないような雰囲気だった。S子はそうと言って僕を見た。
僕が傘を持って喫茶店を出るとまだ小雨が続いていた。S子はまた僕をぎゅっと抱きしめた。S子のお母さんが編んでくれたという黄色いカーディガンが濡れてしまうんじゃないかと僕は庇うように抱いた。また泣いてしまったら困るなと思った。
S子は小さく息を継ぎながらゆっくり私とセックスしようと言った。僕はどうしていいかわからなかった。そのまままうんと言いそうになった。それから私をお嫁さんにしてとS子は言った。僕は黙っていた。S子は僕の目の中探るように見て私処女じゃないのと言った。S子が誰と何時セックスしたのだろうと思ったとき遠く暗い空がゆっくりと渦巻いていくような感じがした。死というのは本当は怖いものじゃなくて、しっとりと人をセックスのように静かに包み込み巻き込んでいくものかもしれない。僕は少し濡れたS子の横顔の長髪に顔を埋めた。S子らしい石鹸のような臭いがした。
井の頭線の乗り換えのところで二人黙って立ち尽くし、それからなんとなく会社帰りの人や学生の雑踏に紛れて公園の方にあるラブホテルに向かった。雨は止んでいた。歩き出すとS子は少し微笑んでいるみたいだった。お金はあるのと手短に言ってきつく僕の手を握った。
ホテルの部屋に入った。ビジネスホテルみたいな感じの部屋に堅い大人たちの裸を毎日くるんでいたようなベッドが見えた。僕たちもあそこで裸で抱き合うのかと思った。それはそうなった。
初めてS子とキスした。唇の柔らかさに吸い込まれていくような感じがした。S子を好きになっていく自分がいたけどその自分が本当に僕なのだろうかわからなかった。
S子の額を覆う髪の毛を両手で上げると今まで僕の知らない大人っぽい女の顔になった。きれいだった。S子は私を裸にしてと恥ずかしそうに言った。濡れたカーデガンを脱がした。そしてブラウスを脱がせた。
ブラとパンティだけにしてから戸惑っているとS子が僕を脱がしにかかった。最後にS子はしゃがんでトランクスを降ろし勃起した僕のペニスの先を軽く吸うようにキスし亀頭の下を少し舐め上げた。S子がそんなことするなんてと驚くよりペニスの快感にもうだめだっていう感じになった。
裸の僕の前にS子は立った。おっぱいが小さいの、いや? そんなことはないよと答えた。そんなことないよ。本当。ブラを外そうと背に手を伸ばした時、前ホックになっているのに気が付いた。知恵の輪を外すようにブラを開くと掌で覆えるくらいの膨らみの白い乳房が現れた。乳首は小さなサクランボのようだった。左の乳首を軽く吸ってみた。U子の乳首ほど突起しない。U子とは上半身裸でペッティングしただけだったと思い出した。
僕はしゃがんでS子のパンティを少しずつ降ろした。こんな時S子はどんな顔してるんだろう思って見上げると優しく微笑んでいた。彼女の笑みに見取れていると、パンティはするっと落ちて、僕の目の前にS子の薄く柔らかに縮れた陰毛があった。その陰りの淵にS子の性器があるのだ。
二人とも立ったまましばらく抱き合ってそれからベッドに入った。S子は私の耳元でマイダーリンと言った。結婚は彼女の妄想のようなものかもしれない。僕がS子にのめり込んでしまえばその時僕は見棄てられてしまうんじゃないだろうか。怪我をした子犬のように不安で身体が縮むように思えて、その怖さから僕は彼女を強く抱きしめた。