ある日、二十年来の友であるB作と私は、ひとつの袋からポテトチップを食べていた。
やがてほとんどのポテトチップを食べ終わり、袋の中はひとつかみの破片だけになった。
袋の中を覗き込んだB作は、私に袋を渡しながらこう言った。
「おくすりいいよ」
私はなんとなくその場の流れで「サンキュー」と言って袋を受け取り、上を向いて残った破片を全部口に流し込んだのだが。
(おくすり?)
心の中でさっきB作が口にした言葉を反復した。
うん。ポテトチップの最後に残った破片を口に流し込むしぐさは、たしかに、薬包紙から粉薬を服むしぐさによく似ている。
何かほかに呼び方はあったような気はするが、「おくすり」というのは初耳だった。