2024-06-05

ポテチ最後に流し込むあれ

ある日、二十年来の友であるB作と私は、ひとつの袋からポテトチップを食べていた。

やがてほとんどのポテトチップを食べ終わり、袋の中はひとつかみの破片だけになった。

袋の中を覗き込んだB作は、私に袋を渡しながらこう言った。

「おくすりいいよ」

私はなんとなくその場の流れで「サンキュー」と言って袋を受け取り、上を向いて残った破片を全部口に流し込んだのだが。

(おくすり?)

心の中でさっきB作が口にした言葉を反復した。

うん。ポテトチップ最後に残った破片を口に流し込むしぐさは、たしかに、薬包紙から粉薬を服むしぐさによく似ている。

しかし、これを「おくすり」と呼ぶのは一般的なのか?

何かほかに呼び方はあったような気はするが、「おくすり」というのは初耳だった。

だが言いえて妙である。私はその呼び名を気に入った。

しか釈然としないことがひとつある。

二十年来幾度となく私とポテチを共にしてきたはずのB作が、私の前でこの言葉を使ったのは今日が初めてなのだ

今私の横でテレビを見ながら次のスナック菓子の袋を開けようとしているB作は、本当に私の知っているB作なのだろうか?

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