・・・
「あの!」
街中で知らない男に肩を叩かれた。男は赤羽業が2年の時に助けた男だと言った。
高校は他校に行ったが自分を助けたことで赤羽が謹慎になったのをずっと申し訳なく思っていたらしい。
我ながら最低だと思う。赤羽にとってはあまり思い出したくない記憶であり、男には悪いがあの時の被害者の顔も覚えていない。
男は続ける。覚えていないだろうとは思っていたが、それでも助けられたと伝えたかったこと。赤羽の行動は自分本位でも自分は勝手に救われた。ずっとお礼を言いたかった、と。
ありがとうと告げる顔は明るかった。
「…。」
もう会う事はないだろう。名前も知らない男は足早に去っていった。
男はすぐに雑踏の中で見えなくなった。