2024-02-19

名もない誰かへ

赤羽業とモブ

歩んだ道が正解でなくとも、救われた人間はいるだろう

・・・

「あの!」

街中で知らない男に肩を叩かれた。男は赤羽業が2年の時に助けた男だと言った。

高校は他校に行ったが自分を助けたことで赤羽謹慎になったのをずっと申し訳なく思っていたらしい。

「いーよそんなの、誰かボコたかっただけだし。」

我ながら最低だと思う。赤羽にとってはあまり思い出したくない記憶であり、男には悪いがあの時の被害者の顔も覚えていない。

男は続ける。覚えていないだろうとは思っていたが、それでも助けられたと伝えたかたこと。赤羽の行動は自分本位でも自分勝手に救われた。ずっとお礼を言いたかった、と。

ありがとうと告げる顔は明るかった。

「…。」

もう会う事はないだろう。名前も知らない男は足早に去っていった。

男はすぐに雑踏の中で見えなくなった。

再び脚を動かしながら、地球が無くなったら彼も死ぬのだろう。と、自分を含めた数十人しか知らない事実を改めて思い知った。

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