前を歩く人のリックサックのチャックが開いている。
中身が見えている、キーケースかカードキーが、歩くたびにカバンから半分身を乗り出したりしている。
私は意を決して、歩速を上げて追い越す時に肩を叩いた。
その人は、え?と驚きつつも肩からはずし、リックサックをお腹側に抱えるように回した。
私は、ダメだ!その方向で回転させてはいけない、それ以上いけない、と内心思った。
リックサックを勢いよく回した事で、カバンの中身と半開きだったフタ部分はかなりキレイに収まり、こぼれる隙もない様相のなか、かろうじてチャックが開いていた。
(なぜこの程度で肩叩いてまで声かけてきたのか)という声が透けそうな会釈を背に受けて、私は足早に次の目的地に向かいました。