「…………」
無言で見つめる俺に、由依は苦笑しながら言った。
「やっぱダメかな?」
「いや、ダメじゃないけどさ。そんなもん見てて面白いのかなって思ってな」
「あー……うん、最初はね、私もそう思ったよ」
「今は違うのか?」
「うん、なんていうかね、こういうのを一生懸命やってる人を見るのが好きなんだよね」
「そういうものなのか?」
「そういうものだと思ってくれればいいよ」
「そっか、ならいいんだけどさ」
まぁ本人がそれで良いというのであれば、俺が口出しすることでもないわけだが。
「でもカズにはちゃんと結果を出して欲しいからね!」
「おう! 任せとけ!」
俺は由依の言葉に大きくうなずいた。
「今日はよろしくお願いします」
放課後、俺は美春さんとともに双葉家の車に乗り込んだ。
後部座席に座っているのだが、運転席にいる壮年の男性とは、一度も会話がない。
美春さんのお父さんらしいのだが、まだ名前すら知らない。
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