2022-07-16

新幹線おしっこ、夏

おれは新幹線に乗り、家へ帰る途中だ。

通路を挟んで隣の席のモンキー・ボーイ達は、乗り込んでからずっとしゃべりっぱなしだったが、話すことが無くなったのか、やっと静かになった。

やれやれ、とおれはトイレに立つ。あと1時間、席に座り続けるには、途中でトイレに行って、ついでに通路で少し足腰を伸ばす。これが一番だ。

男用のトイレには鍵が無く、ガラス越しに通路から背中が見える。少し不安ポジション。だが臆せず、おしっこの放物線をイメージする。アクション。初め、勢いがない日本ラインを描きながら、徐々に回転し、ついに一本の美しい弧を描くことに成功する。

トイレライトは真上からおしっこを照らす。そして気づく。おしっこの影。おしっこ便器に当たる直後、弾け飛び水滴が周りに散る。おしっこと水滴の影。まるで線香花火だ。形を変えながら弾け続ける、儚い夏の夢。美しい。

新幹線の外は激しい雨だ。窓の水滴は、真横に流されて尾を引く。右から左へ、時間の流れを表す直線、タイムライン。この夏は一度きり、過ぎ去った時間は戻らない。

新幹線と、おしっこと、夏。

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