氷室冴子の『さようならアルルカン』を読んでいる最中、ふと、高校か大学時代に関わり合ってしまった性格のくそ悪い奴の顔を思い出してしまったんだけど、どういう繋がりでそんな奴と知り合ってしまったのかが思い出せない。
と、ここまで書いてから、そいつが高校時代の友達の友達だったことを思い出した。ある日の帰り、電車の同じ車両に奴は乗ってきた。あ、やべぇ奴来たと思って気づかないふりをしていたら、向こうからわざわざ隣に座って話しかけてきた。そいつは膝の上になんか綺麗な夜空の絵の載っている画集を広げていたのだが、喋る言葉の端々に私への悪意がもりもりと籠められていて、いい絵を見たところで心は浄化されないんだなと思った。
……という、顔を合わせなくてよくなってから二十年も経つ相手のことを、氷室冴子の文章の何が思い出させたのかよくわからない。