夢の野原に白いつばさをはためかせる夜
葡萄色の絨毯に鱗粉が脈々とひるがえ散り
眠りを守る明日の空が手へといざなう
ゆらゆらと黒い波が夜の底を照し金色の胞子が春雨をしずめる
はるかにとおるサヨナキドリのさえずりが銀鼠の驟雨を黄色くふちどる
東雲の明星は緋色に染まり
石畳ふみしめる蹄鉄の行進は月桂冠のきわまりをなす影法師
陶酔をまさぐる氷山の夢は午睡の渚を描く
福音の矢は風のあいだをこだまする耽溺の百合となり蒼白いきらめきの鱗を招じ入れ
永劫の眼差しは沈丁花の到来を告げ春を黙る星へと帰る
笑うところが想像できないほど完璧な唇
塔の中に既に静寂が高く立ち込め

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