2019-06-02

夜、新幹線

夜の新幹線が好きだ。

仕事が終わり、大宮から北へ旅立つ金曜の夜。

これから旅が始まるという高揚感を、一瞬で過ぎ去る車窓の闇が落ち着かせてくれる。

冬は雪が降り、夏は緑が生い茂る東北の山々も、闇の中ではほとんど判別がつかない。

景色を見るという点において夜はあまりにも不適切だ。

夜の新幹線は、光と闇だ。

から町へ、町から街へ。

明かりが増えてくると列車は減速を始める。

それは私に、私が確実に移動していることを教えてくれる。

日常的に過ごしているごく狭い生活範囲の外へ運んでくれていることを教えてくれる。

降車駅に到着し列車から降りると、少し肌寒く感じる。

首都圏東北の夜は、より寒暖差が激しい。

改札を抜けると、見ず知らずの他人が幾人も行き交い、そこでの生活圏が形成されている。

少しの間、私もそこにお邪魔をさせていただく。

この感覚が心底心地良い。

帰りの新幹線、帰りたくない気持ちと、早く帰って休みたいという気持ちが戦っている。

手に提げたお土産の重さを楽しみながら、私は今、東京行きの最終のやまびこ号に乗っている。

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