2018-12-13

この季節になると、自殺した人のことを思い出す。

その人は、同じマンションに住んでいたというだけで名前も知らない。

大島てるにも載っていないし、同じマンションに住んでいても

自殺者が出ていることを知っている人は、ほとんどいないのではないかと思う。

自分が知っているのも単なる偶然で、この季節、自分の部屋に戻ろうとして

エレベータを待っていたら、ちょうど降りてきたエレベータに乗っていたのが

数人の警察官と、黒いビニールが厳重に巻き付けられ立て掛けられた担架だった。

警察官の一人が持っていた段ボールには、何かごちゃごちゃと入っていて

その中に1枚A4ぐらいの白い紙に投げやりなゴシック体

ヘリウムなので安全です」と印刷してあった。

警察の人は、もうちょっとプライバシーに気を付けたほうが良い。

当時は、まだ硫化水素流行って間もなかったので、そんな紙を遺したのだろうけど

自分が死のうというときに、他人に気を遣っている場合じゃないだろうと

思い出すたびに胸が苦しくなる。

今でも同じマンションに住んでいるが、時折、誰も載っていないエレベータ

扉を開けて待っていることがあり、そんなときは、ありがとうと声に出している。

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