黒服がこれから浮かれたおじさんたちをクラブへ誘おうと人々に目を配っている。
私の彼はこう言った。
「好きでもないし愛してもいないんだよね。どんな気持ちだって言われたら答えられないんだけど…」
知り合って6年ほど、互いに恋愛ホルモンはとうに切れていた時だった。
今見えている情景(犬かわいいねー)や考え(言ってほしいと言われて)を伝えると脊髄反射で反論して持論を展開する彼に、
「好きでもないというのは、出会った頃のときめきがないとかそういうことなの?」
「僕にとっては好きと愛はイコールなんだ」
私は珍しく前向きに彼の心情を受け入れた。