私は黄色が好きだ。
持ち物は、ほぼ黄色でかたまっている。
けれど、黄色の服は一着も持っていない。
一番好きな色ということと、自分の容姿に全くと言っていいほど自信がないこともあってか、「私は、黄色の服を着てはいけない。似合う筈がない」と誰に言われたわけでもないのにそう思っていた。
見つけた瞬間、その場から動けなくなるほど素敵なワンピースに私は「欲しい!!!」という衝動を抑えられず黄色のワンピースを手に取った。
「それ、買うの?」
一緒に来ていた母にそう声をかけられ、私は思わず固まった。
───似合う筈がない
「あっ、」
自分の身の丈にそぐわない服を買ってしまうところだったこと気づき、慌ててワンピースを元の位置に戻した。
「いいの?」
「うん」
「欲しいんじゃないの?」
「素敵だとは思ったけど、私には似合わないし」
私がそう言うと、母は大きなため息を吐いた。
「一度着てみなさい」
「似合わないのに?」
「着てもいないのに、決めつけないの」
母に押し切られるように黄色いワンピースを持たされ、試着室に押し込まれた。
「あれ、しっくりくる」
恐る恐るカーテンを開けると、母は顔をパッと明るくさせた。
「似合ってるじゃない」
「本当に?」
「私がお世辞を言うわけないでしょ」
「どうしよう、嬉しい」
嬉しくて、嬉しくて。
どうしようもないほど、嬉しくてたまらなかった。
「別に奇抜な服を着ようってわけじゃないんだから、それなりに似合うわよ。あなたは、着てもいないのに似合わないって決めつけ過ぎ。これから着たい服はどんどん試着して、似合うかどうか見てみなさい」
「そうする」
母の言葉を聞きながら、これからはどんな色でも着たいと思ったら着てみようと心に決めた。
「わかんない…」
母が得意気に微笑む。
少し泣きそうになってしまった。