「私はがんだそうだ。いやだなあ」
20余年前に死んだ母の日記を見つけた。
中卒で働いて結婚した母の日記は淡々とした日常の描写に終始しており、
たったその一言だけが彼女の感情を遺していた。
苦労人の母にとって、がんで死ぬなんて大した出来事ではなかったのかもしれない。
そう思いながら、子どもの、つまり自分のことに支配された日記の、80年代らしい少女趣味なカバーが涙でぼやけているのをしばらく眺めていた。
もうすぐ母の年齢に手が届く。
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