リビングで飼い猫のちび(メス)と戯れていると、母が愉快そうにそんなことを呟いた。
「そうかな?」
「えっ~~~、私が親じゃないの?」
「違うに決まってるじゃない」
弾けるように笑ったあと、母は思い出すように口を開いた。
家に虫がいると捕まえて私のところに持ってくるのは、狩りの仕方を教えるため。
鳴き声を上げながら私を連れて歩く時、夏は涼しい場所を冬は暖かい場所を教えるため。
家の周りを探索したとき、私の前を歩いていたのはいつでも私を守れるように。
私が体調を崩したり、泣いているときに傍にいるのは心配だから。
「挙げていったらきりがないほど、ちびは親としてあなたと接しているのよ」
「気づかなかった」
「猫としての本能もあるけれど、あなたを思う気持ちも少なからずあると思うわ」
私はその言葉が嬉しくて、嬉しくて窓際で黄昏ているちびの隣へ行き顔を合わせた。
「ちび~~~、そうだったの~~~。私、めちゃくちゃ嬉しい。ありがとう」
頬擦りをしようと顔を近づけると、ちび渾身のネコパンチをお見舞いされた。
「痛い、でもそういうとこも好き」
邪険にしても怯まない私に呆れたのか、ちびは二回ほどゆっくり瞬きをしたあと、身体を倒し丸くなる。
私もちびの隣で横になり、瞼を閉じた。
小さな寝息が心地よい。