2016-05-08

失敗の記憶

小学2年生のある日、学校餅つき大会があった。

当時学年で200人も居るものから、当然全員同時というわけにはいかない。

その都合でついた餅はその場で調理されることなく、持って帰ることになった。

先生が僕らに持ち帰るためのビニール袋とサインペンを配り、袋に名前を書くように言った。

僕はサインペンを手に悩んだ。袋のどこに名前を書けばよいのか。

僕は失敗を恐れている。もしひとり同級生たちと違う場所名前を書き、笑われることを恐れた。

そこで隣にいた池本くんの手元を見た。

池本くんは袋の右下に、縦書き名前を書き始めていた。

なるほど、なら僕もそうすればいいのか、とペンを走らせた。

『池本』

ちなみに僕の名前は池本ではない。

ついつられて、池本くんの持つ袋と同じ文字を書いてしまったのだ。

慌てて上から塗りつぶし、この失敗は(おそらく)誰にも知られずに終わった。

それでも僕にとっては、今も忘れられない失敗の記憶である

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