当時学年で200人も居るものだから、当然全員同時というわけにはいかない。
その都合でついた餅はその場で調理されることなく、持って帰ることになった。
先生が僕らに持ち帰るためのビニール袋とサインペンを配り、袋に名前を書くように言った。
僕はサインペンを手に悩んだ。袋のどこに名前を書けばよいのか。
僕は失敗を恐れている。もしひとり同級生たちと違う場所に名前を書き、笑われることを恐れた。
そこで隣にいた池本くんの手元を見た。
なるほど、なら僕もそうすればいいのか、とペンを走らせた。
『池本』
ちなみに僕の名前は池本ではない。
ついつられて、池本くんの持つ袋と同じ文字を書いてしまったのだ。
慌てて上から塗りつぶし、この失敗は(おそらく)誰にも知られずに終わった。