雪と珊瑚とを読んだ。温かなお話は大好物なので、とても清々しい読後感で満たされた。
人によっては出来過ぎたサクセス・ストーリーだと鼻白む内容かもしれない。解説でもそのことには触れられていた。
でも、理性的な眼差しで描かれた成功譚って胸がほっこりするから個人的に好きだ。
食事という行為について。親子の愛情や、周囲の人々との人間関係について。この小説は直情的にならず、穏やかな視線で描いている。
愚か者が登場しない物語は展開が緩やかになりがちだけれど、その分じっくりと体に染み渡る温かなスープのような出来上がりに仕上がっていたのも好印象。
ほっと一息つきたい時や少し立ち止まって周りを見渡した時に読むと、すっと清らかになれるような、そんな一冊でした。