2016-01-05

傷を残したい

安心してほしい、俺は別に邪悪人間ではない。正しくは邪悪にさえなれない程度の小心者だ。あなたに害意を持っているわけではないし、あなたを傷付けたいわけではないし、あなたの涙に――あなた性別までは知らないが――性的興奮を覚えるような変態性欲の持ち主でもない。俺はあなたに俺のことを覚えておいてもらいたいだけだ。

思うに、人が人を深く記憶するとき、多くの場合そこには傷を、あるいは傷のようなものを伴うのではないか。怒り、悲しみ、妬み、敗北感、横恋慕。そう、甘くて尊い愛情でさえも相手が去った後には傷を残すのだ。そんな傷をもたらす、あなたにとって有益有害人間になりたい。あなた自覚さえさせないうちにそっと擦り傷や切り傷を与え、その傷が治らないことで初めて傷の存在に気付くような、そんな薄い薄い毒をまとった人間でありたい。あらゆる「あなた」と俺はいずれ別れる日が来る。そのとき、あらゆる「あなた」の中にちくちくと痛む傷を残すことができれば、俺は何かに認められたと感じられるのだ。

恋なのかな、これ。概念的な。

  • 広義の恋だね、関心がほしいんだ 愛情が得られなければ憎しみを、憎しみが得られなければ嫌悪を欲しがる…という言葉をどこかで読んだけど

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん