2011-11-28

「おめでとう」がつらい

数年生活を共にしているパートナーと、数ヶ月前に結婚した。

一緒に暮らして長いので生活は変わらないし、十分に幸せだったので、いまさら結婚などする必要も感じていなかったのだけれど、相手と相手の親族の強い希望で、届けを出すことになった。

 

お互い派手なことが苦手なので、最低限必要な相手にだけ報告した。

結婚を人に伝えると、みんな「おめでとう」「よかったね」「幸せでしょう」と言ってくれる。それはとてもありがたいことで、感謝している。

 

けれど、姓を変えざるを得なかったことでの自己喪失感を理解してくれる人はどこにもいなくて、この数ヶ月、祝われるたびに憂鬱が募っていった。

 

「いま人生でいちばん幸せでしょう!」と笑顔で言ってくれる人に対し、「でも姓を変えなきゃいけなかったのがつらいんです」とはとても言えなかった。120%幸せに振る舞わなければいけなかった。それがひどく疲れた。

 

そんな中、年に一度の健康診断で、問診票に間違えて旧姓を書いてしまい、慌てて二重線をひいたら、お医者さんに「最近結婚されたの?」と聞かれた。

ああ、ここで「はい」と答えたらまた「おめでとう」と言われて、自分は一点の曇りもない幸せな顔をしなければならない。嫌だ、答えたくない。

そう思うも答えないわけにもいかず、「ええ、はい…」と言うと、お医者さんは「私もしばらく慣れなかったですよ」と笑った。

「書き間違えたり、呼ばれても誰のことだかしばらく気づかなかったり。大変だった」

 

初めてだった。おめでとうじゃなくて、大変さに気を向けてくれた人がいた。

ひどくびっくりして、初めて救われたような気がした。

他人だからおめでとうを言う必要がなかったというそれだけなのかもしれない。だけど、とてもほっとした。

 

これからは少し、楽な気持ちになれそうな気がする。

  • 結婚したって聞いたら「おめでとう」は社交辞令。 だからって「姓を変えざるを得なかったことでの自己喪失感を理解してくれる人はどこにもいない」なんてことはない。 少なくと...

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