目を開けたら見慣れない天井
瞬間、体全体に激痛が走る
何故私はここにいるのだろう
記憶の糸を手繰り寄せてみる。…だめだ。思い出せない
幾日かが過ぎた
私の枕元で泣きむせぶ母親
さらに何日も過ぎた頃
スーツ姿の小柄な男が私のいる病室に入る
見慣れた分厚い眼鏡をかけて、手には花を持って
「・・・・・」
私に向けて、何かを言う。でも聞き取れない
懐かしい感じがする。でも、嫌な感じもする
「・・・・・」
誰なのか、分からない。思い出せない
無言
記憶の糸を手繰って、そして。
貴方なんか、知らない
もう、 。
「・・・・・」
最後に見たのは、悲しげに顔を歪ませた貴方の顔
もう、終わったんだ。
心が、疲れてたんだ。悲しかったんだ。
あっという間の出来事だった
私の手も、足も、その時に置いてきたんだろう。
長い距離を、わざわざ時間を作って、逢いに来てくれたんだ
それを知っただけでも、充分だよ
もう、貴方と会うことはないでしょう
私は忘れていて、思い出した
貴方は覚えていて、これからは忘れる番。
どうか、元気で。