当時13歳。俺と姉の目の前で土下座をしながら「悪い父親ですまなかった」と言ってきた親父の背中はとてつもなく小さく、今でも思い返すたびに涙がでてくる。
俺を育ててくれていた親父ってこんなやつだったの?という悲しみと蔑み。当時の俺は一体どんな心境だったのか。思い出せない。
10歳の頃から両親は不仲だった。口を開けばケンカばかりだった。俺は両親とも好きだった。
ケンカして欲しくなかったけど、そんなこと言えなかった。
11歳頃になると母は、父と口も聞きたくなかったらしく、俺が橋渡し役となった。
母が父に言いたいことを、俺が父に伝え、父の返答を俺が母に伝える。
この頃、俺は自然と笑顔が身についていた。嘘の笑顔。子ども心になんとか明るくしようと思っていたらしい。
12歳頃になると、母は離婚をする決意を固めた。
俺は嫌だった。母に泣きついた。ねぇ、考え直して。って。
母も泣きながら言った。もう、限界なの。と。それを聞いて俺は再び泣いた。
理由は親父の浮気だった。
そして、13歳のある日。ずっと住んでいた家を離れた。
なにがなんだかわからなかった。今日から家族ではなくなるというのが信じられなかった。意味がわからないんだ。本当に。
17歳になったある日、久しぶりに元実家を訪ねた。
そこには男物とは思えない傘が玄関に立ててあった。
あぁ、親父はいま違う家族を持っているんだ。と思い知らされた。
親父にとって俺は一体どんな存在だったのだろうか。愛ってなんなんだろうか。寝つけられない。