日本をはじめとする多くの国では、隣人を殺して食べることが禁止されている。
一方、日本をはじめとする多くの国では、ウシを殺して食べることは禁止されていない。
(ただし、他人の所有するウシはこの限りでない。また、ウシに著しく苦痛を与える行為は、動物愛護法で禁止されている。)
これは、ウシにはヒトに対するものほどの権利が認められていないからだと考えられる。
ウシだけでなく、ブタについてもイヌについても、ヒトに対するものほどの権利は認められていない。
ところで、世界ではある時期まで、ある属性の人に認められる権利が、別の属性の人に認められる権利よりも制限されていた。
たとえば、かつてのアメリカでは黒人の権利が白人の権利よりも制限されていた。(現在でもそうだ、と主張する人もいる。)
この黒人に対する差別は、差別に反対する多くの人(そこには黒人も白人も含まれる)の努力により解消、あるいは少なくとも縮小した。
かつては白人に生まれるか黒人に生まれるかで、与えられる権利に大きな差があった。
現在もヒトに生まれるかイヌに生まれるかで、与えられる権利に大きな差がある。
ある人はイヌを殺して食べるのはかわいそうだという。別の人はクジラを殺して食べるのはかわいそうだという。
でも、ウシを殺して食べるのがかわいそうだという人は少ない。そういう人達がデモを企画したら炎上した。
しかし、ヒトを食べるのは犯罪で、イヌを食べるのがかわいそうなのに、ウシを食べるのはOK、という倫理は自明だろうか?
ペットとして飼われるイヌやネコは食用には向かないと思うけれど、仮に食用に適したイエネコの品種ができたら、食用に供するのが自然だろうか?