2016-10-16

しかるに今の日本人の考うるところは何か。その望むところは何か。

その最大の問題は、物質問題、經濟問題である。その最も望むところは自己収入の些少(さしょう)の増加である。または自己中心の小さき戀愛問題である

その最も好んで讀むものは、遊戯的の愛欲を題材とした片々たる駄小説の類である

自己の小利害 -- これが現代日本人支配てゐるすべてである。實に侏儒しゅじゅ)の集合というべきはわが民族の現状ではないか

そしてクリスチャンと稱する者までがこの惡風に染みて、多くはただ自己の小慰安のためにのみ福音を信じつつあるは、痛歎すべききわみである

かく、おのれを主とする信仰は決して實の信仰ではない。おのれを忘るる信仰こそ眞の信仰である。おのれを忘れて世界を思うこと、これをわれらは日本今日キリスト敎徒に勧める。

廣漠なる世界、そこにはいまだ福音の光に觸れざる民が何億となく存在てゐる。福音の光に照らされざる地が幾千幾萬マイルとなく存してゐる。

このことを常に忘れてはならない。もとより世界傳道の使命を受くることなくして世界傳道の旅に上ることはできない。ゆえに傳道者は特別の人に限る。

ただ、すべての信者要求せらるることは、自己慰安を主とする信仰を捨てて、世界を思う信仰をいだくことである

かくして、一身の利害得失を忘れて、わが信仰生活性質を向上させその内容を豐富にする心がけを持たねばならぬ。

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