話に出てくる「いい子」と「悪い子」の一人称が、みんな「ぼく」「わたし」だったから。
もちろんどの学年でも「ぼく」「わたし」の子は普通にいたけど、それ以上に男の子なら「俺」、女の子なら「あたし」「ウチ」だった。
真面目な主人公は言うに及ばず、ボールを独り占めしたり宿題をしてこなかったりする「悪い子」も、先生の前ではきちんと「ぼく」って使えてたりして。
道徳っていう教科の性質、本やテレビの影響も大きかったんだろうけど、学年があがるごとにどんどん「ぼく」「わたし」には共感できなくなっていった。一人称が「ぼく」の奴が乱暴者なわけがないっていう変な思い込みもしてた。
大学に入って文学部の講義を受けて、物語における一人称の重要性を知った。
良いとか悪いとかじゃなくて、一人称が自分のイメージと食い違うだけでキャラクターに共感しにくくなることもあるんだなっていう話。