2008-02-26

ホテルで僕を抱きしめてくれた風俗嬢の話

http://anond.hatelabo.jp/20080226131929

Aさんの実家を訪れた2週間後、僕はついに潰れてしまった。

いわゆる引きこもりと似た状況になった。

もう動けない……と思った日とその翌日はアパートから一歩も出なかった。

不思議とAさんの後を追いたいという気持ちにはならなかった。

3日目は夜10時ぐらいまで部屋にいた。

その後、近所のコンビニの店員が女性から夜勤学生に変わるタイミングを狙って、買い物へ行った。

固形物は受け付けないので、豆腐ヨーグルトと酎ハイを買った。そして睡眠薬チャンポンで飲んだ。

アルコールは全くダメなのだが、とにかく眠りたかったのだ。

だが、数十分後に全て吐いてしまった。トイレには赤い血が混じっていた。

6日目にようやく動く気になった。病院へ行って点滴を受けた。

その足で職場へ行き、しばらく仕事ができないと伝えた。

ひたすら嘔吐ネットを繰り返す日々を過ごした。

なんとか気力を振り絞ろうと、同人誌の作成に乗り出した。

夏コミあわせの〆切まで2週間を切っていた。

根性で造った本はなんとかよく売れた。

日々の空白を埋めるため「はてなダイアリー」を始めた。

自分の中の暗黒面を出さないようにちょこちょこ書いていたらヒット数も増えた。

仕事場へも戻れた。

でも空虚さは払拭できない。

最初は後悔や自責の念に駆られていたが、半年後には虚無が僕を支配していた。

なにも考えられない日々が続く。

そんな僕は女とのセックスにのめり込んだ。

知っている人は知っているし、知らない人は知らないのだろうが、

日本ではカネさえ出せば女性と性行為あるいは疑似行為を体験することができる。

安ければ5000円(ただし15分)から。増田でも書きにくいことすらした。

その中には見るからに心を病んでいる子もいた。

自暴自棄になっている僕を見かねた知人が忠告した。

「やめとけよ。それって、ただ自分を傷つけているだけじゃないの」

カッターナイフがなくても自傷行為が出来ることを僕は知った。

あるデリバリーヘルスの、ある女の子へ通い詰めた。

正直、美人ではないし、体型も胸も中途半端

別にテクがあるわけでもないし、店の人気嬢ではなかった。

でも、黒い長髪と肉感のある体、穏やかな語り口、垢抜けしない服装、

そして自己主張しない雰囲気が、僕を癒してくれた。

Aさんと同い年だが、あらゆる意味で対極的だった。

過度にハマらないよう、行くのは月に一度と決めた。

彼女に包まれ、サービスを受ける時だけが「生」を感じられた。

彼女が店を辞めることになった。

人気がないし、お金も稼げないし、普通バイトに変わると言うのだ。

サービスを受けた後、ベッドの上で彼女はこう問いかけた

「どうしたの。なんかいつもと違うね」

少し迷って、「えっ、ああ。プライベートでいろいろあってね」と答えた。

そして「君といる時間が楽しかったよ」と付け加えた。

そんな僕を彼女は抱きしめてくれた。

しばらくしてタイムオーバーベルが鳴った。

最後に「次の仕事。がんばってね」と言うと、お別れのキスをしてくれた。

彼女デビュー直後だった二年前、携帯メアドを教えてくれていた。

僕の家のどこかにそれはある。でも、探すのは止めた。

もうAさんの死から一年半が経っていた。

ようやく長い冬から抜けられそうな気分になってきた。

しかし、一つ不安があった。

葬式の日、僕を抱きしめながら「大丈夫だから」と言ってくれた

Bさんと連絡を取ることにした。

記事への反応 -
  • http://anond.hatelabo.jp/20080223175457 >不幸も幸福も編みこんだ縄みたいにくるくるとくるものなのさ 「くるくるとくるものなのさ」というのはイイ表現です。 死んだAさんの葬式の後、 動...

    • Aさんの葬式で取り乱した増田を抱きしめてくれたBさんの器のでかさに今後も期待したい。 増田も今年の桜を見上げるために、強くなれ。自分を責めるより時間を過ごすより、ただAさん...

      • http://anond.hatelabo.jp/20080223205842 コメありがとう。 パソコンと電話回線を繋いで10年になるが、 初めてホロッときた。 >Bさんの器のでかさに今後も期待したい そうだな。オレもそう思う...

        • http://anond.hatelabo.jp/20080224002737 選択肢として自らを滅することを選んだAさんは、 いわゆる鬱+境界性人格障害+摂食障害だった。 本人が打ち明ける以前からなんとなく察しは付いてい...

          • http://anond.hatelabo.jp/20080226015115 Aさんの命日から2ヶ月ほど経ったある日。 出張のついでに彼女の実家を訪ねてみた。 今の家から電車で2時間。昔住んでいた家からは5km程の距離だ。 バブ...

            • http://anond.hatelabo.jp/20080226131929 もう動けない……と思った日とその翌日はアパートから一歩も出なかった。 不思議とAさんの後を追いたいという気持ちにはならなかった。 3日目は夜10時...

              • http://anond.hatelabo.jp/20080226210253 Bさんと久しぶりに2人で出かけることにした。 1度目は学生時代、2度目はお葬式、3度目はある町の寺社仏閣めぐり、 今回はお墓参りである。 集合...

                • http://anond.hatelabo.jp/20080301123934 「いつも自分が他者にどう見られるのか。そればかり悩んでいた。」 と 「他の人の気持ちも考えなくちゃ」 の違いが理解できない。くそ、もうだめなのか

                  • あの子は、いつも自分が他者にどう見られるのか。そればかり悩んでいた。 なぜ受け入れられないのか。なぜ他者とあわせられないのか。そのことに苦しんでいた。 僕は「他の人の気持...

                    • なるほど。まさに表面上はそこまで理解はできてはいて、 人の気持ちを理解するように努力はしているのですが、 「思いやり」をもって接したつもりでも 「ご機嫌取り」としてとられる...

                    • なるほど。まさに表面上はそこまで理解はできてはいて、 人の気持ちを理解するように努力はしているのですが、 「思いやり」をもって接したつもりでも 「ご機嫌取り」としてとられる...

                    • http://anond.hatelabo.jp/20080302145323  こんな増田の独り言に関心ある人がいるんだ……  今週は仕事でドタバタしていて続きが書けないのだけど。 「他人に受け入れられる」ためには「他者...

                    • http://anond.hatelabo.jp/20080302145323  こんな増田の独り言に関心ある人がいるんだ……  今週は仕事でドタバタしていて続きが書けないのだけど。 「他人に受け入れられる」ためには「他者...

    • あの子が死んで二年目の春を迎える。 花粉が飛散していたある日、 「結婚して」と言われてしまった。 もう人生を前に進むためのカードを 使い果たしてしまった。 オレん家で主婦と...

      • 心配しないで。きっとくるさ! 今日は風が強いね。 梅の花が散っちゃいそうだよ。

      • http://anond.hatelabo.jp/20080223032623 初増田でコメがつくと思わなかった。ありがとう。昨晩、久しぶりに眠れなくなった。 ボーダーの子に振り回されてはダメ……と思いながら、見事に振り...

        • 長い人生だもの色々あるよ! 禍福は糾える縄の如しっていうじゃない。 不幸も幸福も編みこんだ縄みたいにくるくるとくるものなのさ。 冬が長ければ春の楽しみも増すんだよ。 辛くて...

      • あの子が死んで二年目の春を迎える。 花粉が飛散していたある日、 「結婚して」と言われてしまった。 (中略) 昨年夏から落ち着いたと思ったけど、 二度目の春がまたやってきた。 ...

      • http://anond.hatelabo.jp/20080223032623 http://anond.hatelabo.jp/20080412102603 とりあえず「一人より二人」。 そして「一人になれない人間は、二人になれない」。 心の病を抱えて僕にプロポーズしつ...

      • http://anond.hatelabo.jp/20080223032623 http://anond.hatelabo.jp/20080412102603 とりあえず「一人より二人」。 そして「一人になれない人間は、二人になれない」。 心の病を抱えて僕にプロポーズしつ...

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん