仕事中、ずっとヘッドフォンをつけている。
それは仕事柄、仕方がないことだった。
家を出て、移動中には音楽を聴き、電車に乗るときには外す。
環境音が耳を劈き、スマホ片手に情報の波が押し寄せる。
家に帰って、それから仕事を終えると一息つく。
ヘッドフォンを外してデスクに置き、ディスプレイをオフにする。
情報に帳を下ろして静寂に耳を傾ける。
温かいココアを入れ、お気に入りの椅子に座り、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの短編をじっくり読む。
一行一行、噛みしめるようにゆっくりと。
焦る必要はない。
秋の夜は長いのだから。
僅かに響くページを捲る音。
頭の中で広がる嫋やかな物語。
そんなとき、私は幸福の意味を知る。
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