大変だった人も多いだろうけど、俺にとっては、もうすぐ終わるかもしれないし、ずっと終わらないかもしれない自粛生活は物語の中のようなモラトリアムだった。入り浸っていた女の子の家、リモートのだらだらとした仕事、20時までの営業の普段は予約が大変な飲食店、暇つぶしのためだけに眺めていたテレビのバラエティ。今となっては全部が懐かしい。大人になると人生は選択の連続だけれど、すべての選択を先送りにして良いという空気感がそこにはあった。ずっと夕方だったような気さえする。あの時が戻ってきて欲しいなんて口が裂けても言えないけれど、あの時のことをもう少し記録しておけば良かったなとたまに思う。最後の長い休暇だったのかもしれない。