スメラフォリンは森のエルフの言葉で、
直訳すると、愛おしい香り。
わたしが19のとしに恋人から贈られた言葉だ。
あれから長い歳月が流れて
わたしには大きな変化が訪れたが
変わらずに恋人はわたしをスメラフォリンと呼ぶ。
姿形は初めて会ったときと変わらぬあなた。
その陽気な言葉と誠実な心は変わらぬあなた。
でも変わったものがひとつだけ。
その瞳の奥には深い悲しみの光が時折覗くようになった。
それは死せる者の定めを覗き見るエルフの瞳が
わたしとの間もなくの別れを予見させるからなのだろうか?
しかし、悲しまないで欲しい。エルフの君よ。
そのときが訪れようと私はあなたから離れることはないのだから。
そのときに私は風となるでしょう。
そのためにシルフたちから森を吹きぬける風となる術を
わたしは学んできたのですから。
だから、そのとき。
わたしは風になる。
森に流れる風となる。
その風は冬のときにあなたのそばを離れようと
春の夜には暖かなそよ風をあなたのもとへと運ぶのです。
だから。
もう悲しまないで。
私は風となって再びスメラフォリンをあなたのもとへと届けるのですから。
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