高い建物の一階が怖い。一階にいると意識して、この階の上にはさらに階があると想像するのが怖い。
この上の階のさらに上にも階があり、そこには人がいて、物があって、何より巨大な構造物、それを作り上げる金属や石の重量感。それらを想像すると恐ろしくなる。
建物は安定した状態にある。それはそうだ。けれども永続的に安定しているなんていうことはあり得ない。今が安定しているだけで、ふとしたきっかけでそれは不安定になる。今この瞬間が、その状態変化の時だとしたら。強靭な構造の一部がポロポロと崩れ始めているとしたら。
仕事中にふと一息をつき、窓の外を眺めると、そこに広がるのはミニチュアの世界。箱型の構造物が並ぶ、一見安定した風景。ふとしたきっかけで崩れてしまうかもしれない景色の、今は保たれている静寂。