以前住んでいたアパートの前には田んぼがあった。周りをぐるりと住宅地に囲まれて、ポツンと残された小さな田んぼだった。
田植え後にはオタマジャクシがたくさんいて、夜になるとたくさんのカエルが大合唱していた。
ある冬、田んぼは突然埋め立てられた。たくさんのカエルたちも、冬眠したまま一緒に埋められてしまった。
田んぼだった場所はこども向けの音楽教室とアスファルトが敷き詰められた駐車場になった。
きっと音楽教室では今日もこどもたちが「かえるの歌」を歌ったり、ピアノでひいたりするのだろう。
こどもたちに教えてあげたい。君たちの足の下にはケロケロ鳴く春を楽しみに待ちわびていたカエルさんたちが埋まっているんだよって。別によくあることだから気にしなくていい、でも忘れないでって。