「テッペンカケタカ(私にはそう聞こえる)。テッペンカケタカ」
そしたらウグイスが張り合うように鳴き始めた。
もう、何やっているの。ウグイスがホトトギスに自分の存在をアピールしちゃだめでしょ。そんなんだから托卵されちゃうんだよ。
紀貫之の娘が梅の木に「勅なればいともかしこしうぐひすの宿はと問はばいかが答へむ」と結んだ話が『大鏡』にあるが、梅の木に好んで来るのはメジロだ。ウグイスの宿は藪だ。家の周りには廃止になった公務員住宅がいくつもある。その敷地はもともと植えられていた低木の他にもススキやらセイタカアワダチソウやらアズマネザサが生え放題になって、ウグイスの巣にはちょうどいい藪になっている。
最近は公務員住宅跡地も次々とマンションや住宅地に姿を変えている。藪がぼうぼうの無人の建物をそのままにしておくわけにもいかない。あと何年かしたらウグイスもホトトギスもここにはいなくなる。「宿は?」と問うこともなく黙ってよそに行くだけだ。大したことではないのだけれど少しさみしい。