横断歩道、ホームから見る線路、エレベーターの扉の先、道路の真ん中、車道の先
私は、それを死が香る場所と言っている
何故なら、時間という位相がずれた隣の「空間」には、死があるからだ
そこにいれば、人間には確実に死が待っている
私が死んでいないのは、その時にそこに居なかったからに過ぎない
5秒前にそこにいれば、私はこの世界に居なかった
5秒後にそこにいれば、私はこの世界に居なくなる
たったそれだけの違いが、私をあっけなく(この世|枠組み)から追放する
じっと、じっと、永くじっと、ひたすらその香りを、漂い移ろうそれを眺め続ける
そして、ふと考える、思い浮かべる
そこにいなかったのは、偶然に過ぎない
私の頭の中の一個の神経細胞が、一個の軸索が、一個の伝達物質が、一筋の電流が、発火が、発作が、偶然が
そよ風一つで揺らぐような偶然が、私の(死と生|死/渡世)を分けたに過ぎない