■失ったものを取り戻す戦い
昔は良かった。
祖父母はまだ元気だった。
死んだ人も居らず、認知症にもなった人もおらず、金にも困った人もいなかった。
叔父は破産しておらず、母も今ほど困窮していなかったし、父を今ほど軽蔑し嫌悪することもなかった。
そう、たかだか20年ほど前の話だ。
全てが悪い方向に進み、ぼくだけが取り残された。
ぼくだけはまだ大きな敗北をしておらず、親類はボロ雑巾になった。
お金は全てではないが、お金を失ったものが健全な思考をすることは難しい。
中には元から金も思考力もないものもいたけれど。
ぼくは彼らのようにはなるまいと、お金に執着し、少しばかりのお金を得た。
まだまだ失ったものを買い戻すだけのお金はない。
もっと勝ち続けないといけない。
ぼくだけは20年前に戻って未来の僕を救わなくてはいけない。
分かっているんだ。
もう残された時間は少ない。
ぼくだけは負け犬に成り下がってはいけないと思うんだ。
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