歳をとるまで気づかなかったよ。ガキのころは読める範囲のマンガなら全部読んだし、繰り返し何度も読んだマンガだって少なくなかった。そういう風にずっと読んでいけるものだと思っていた。
だけど読まないままのマンガを積み上げ続けているのが現実だ。マンガ夜話で夏目房之助が長い作品は最後まで読めないと言ったことが理解できてしまうなんて。
全部いつか読もうと思ったマンガなんだ。ジョージ秋山の捨てがたき人々も、はるき悦巳のじゃりン子チエも、美内すずえのガラスの仮面も。でもなんかもう無理。手に取れない。受け止める体力がない。あんなに焦がれた作品を一度も読まないまま俺は死ぬのだ。手を伸ばせばそこにあるのに。
関心と体力の両方がある時期は短いなんて知らなかったんだ。こんなはずじゃなかった。老後の楽しみになんて置いておく必要はなかった。意味や価値を十分理解するほど成熟していなくても、読めるときに読まなければ経験にすらならない。本棚に並ぶのは後悔ばかりだ。