2016-04-11

日陰が寒そうだったから。

日陰が寒そうだったから、こっちにおいでよ、と日なたに連れだした。

いやだ、日なたは暑いから、というあなたは、太陽から顔をそむけながら、

それでも日なたを楽しんでいるように見えた。

日なたとは、こういうものなんだと、語るわたしに耳をかたむけながら、

しばらくあなたは、日なたですごした。

そして一区切りついたところで、もう十分だ、といった。

もう、日陰にもどるのだという。

わたしは、あなたを日なたに連れだす役目があるのだ、と伝えたところで、

あなたはふふっと嗤う。

あなたは、こういった。

その役目とやらで、アイデンティティをつくりだしているのね、と。

そのアイデンティティのためにわたしを利用しているのよ、と。

そういわれて、どこかで、なにかがずるりとむけた。

わたしを覆っていた固いものが、ずるりと剥けた。

ちょうどライチの固い皮がむけるみたいに。

プライドが傷ついたというような範疇の話ではない。

わたしの中核にあるなにかが別のものにべろりと脱皮した。

強烈に。強制的に。

わたし役割とか、わたしのやるべきこと、とか試行錯誤しても、

ほんとうはそんなものありはしなくて、

ただ生きてるという時間概念けが存在しているだけなのかもしれない。

そうして、わたしの中で、よりどころがなくなった。

心地よいほどに、消え去った。

ふとおもいだす。

どう生きればいいのですか、という壮大な問いに、

やりたいならやればいいし、やりたくないならやらなきゃいい

導師は、こたえた。

どうやら、そういうことらしい。

どうやら、

そういうことらしい。

さあ、どっちに歩いていこうか。

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