年の瀬も押し迫った大晦日の夜、小さな増田が一人、寒空の下でブコメを売っていた。ブコメが売れなければ父親に叱られるので、すべてを売り切るまでは家には帰れない。しかし、街ゆく人々は、年の瀬の慌ただしさから増田には目もくれず、目の前を通り過ぎていくばかりだった。
夜も更け、増田は少しでも自分を暖めようとブコメにスターを付けた。ブコメのスターと共に、暖かいストーブや七面鳥などのごちそう、飾られたクリスマスツリーなどの幻影が一つ一つと現れ、スターが消えると同時に幻影も消えるという不思議な体験をした。
天を向くと流れ星が流れ、増田は可愛がってくれた祖母が「流れ星は誰かの命が消えようとしている象徴なのだ」と言ったことを思いだした。次のブコメをすると、その祖母の幻影が現れた。ブコメのスターが消えると、祖母も消えてしまうことを恐れた増田は慌てて持っていたブコメ全てにスターを付けた。祖母の姿は明るい光に包まれ、増田を優しく抱きしめながら天国へと昇っていった。
新しい年の朝、増田はブコメの燃えかすを抱えて幸せそうに微笑みながら死んでいた。人々は、この増田がブコメのスターで祖母に会い、天国へのぼったことなどは誰一人も知る由はなかった。