■死んだあの子のための
あの子は死にました。
ただ死にました。
バラバラに引き裂かれて殺されました。
誰が悪いわけでもありません。
ただ死にました、それだけのことです。
あの子は自分の意志で生まれてきました。
生まれたからには死ぬことがわかっていて、
それでも生きたいといって生まれてきました。
どんなにボロボロになっても生きたいと最期まで言い続けて、
その言葉のとおりに精一杯生きて、最期は惨たらしく死にました。
誰にも望まれずに生まれてきて、ひとりぼっちで死にました。
周りに迷惑をかけ続けて、何も遺せずに死にました。
カッコ悪くて惨めな最低の死に様でした。
でもそれがあの子の望みだったから、仕方ありません。
あの子は生きている間ほとんどずっと悩み苦しんでいました。
でもその苦しみこそが、あの子が生きていることの証でした。
今はもう誰もあの子を苦しめることは出来ません。
全ては終わったことなのですから。
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