「鶴を折ってください!千羽鶴の鶴を一つ折ってください!」
と声をかけているおばさんがいたので、どれ!どこでも鶴を折る人といえば私のこと!とばかりに一つ引き受け、できましたよ!と鶴を渡すと、おばさん急に目つきを変えて、
「ありがとうございます、感謝いたします、今ですね、原爆被害者の鶴を折っていただいた方にこの広島長崎の鶴の方にだけこの冊子をお渡ししていてですね!長崎広島のために!」
とまくしたててきた。
いえ、冊子は要らないですよ、鶴だけ受け取っていただければ。とやんわり断ると、
「ですからこの鶴を折っていただいた方だけに今、この冊子を渡していて、この冊子は原爆被害者の怖いことを書いてるわけではなく、原爆被害者はこんなに嬉しいんですよという冊子を、原爆被害者の鶴のために渡していてですね!」
とさらにまくしたててきた。
さすがに何を言っているのか分からなかったので、ニコニコしながら後ずさりしていたら、渡したはずの鶴をつき返してきて、
「鶴が無駄に、長崎広島の原爆被害者が無駄にしないために冊子を渡しているんですよ、原爆が鶴が無駄になるのだったら残念です、私だって日中は若い子が『つらいくるしい』という職場で働いているんです、無駄になった原爆被害者が残念です。残念ですけど、申し訳ないという気持ちはあるんですよ!原爆被害者が無駄になって残念です!申し訳ありません、すみません。」
と言いながら声かけに戻っていった。