彼ははてな村のなかで、あらゆる所に火をつけて回った。
僕は結局彼の放った多くの火のうち、大きくなったものの野次馬をして、キャンプファイヤーをしていたに過ぎなかった。
彼は違う。自らの体に灯油を浴びせ、盛大に火をつけた。
多くの人は外から石やら芋やら手斧やらサラダ油を好き放題投げ入れていたが、その多くは自分が火の粉をかぶることを嫌がった。
いつもそうだ。自分は観客で、舞台を観客席から眺めているだけなのだ。
斎藤ハウスも訪れたいと思いながら、結局伺うことができなかった。それは僕に一歩踏み出すだけの何かが無かったからだろう。
僕はこれからも観客で居続けるのだろうか。内心では分かっているのだ。彼らのように舞台で火だるまになったり、ピエロを演じることなど二度とできないと。