......だから、雨が飴だったらって話なの。
それってさ、子供がよく考えそうなことだよね。
子供で悪かったわね。
いや、そうじゃなくて。
体は余計だと思うけど。
頭も否定しなさいよ。
でもさ、飴玉が降ってきたら痛そうだね。
話変えないでよ。
戻したんだよ。きっと傘もすぐ傷んでしまいそうだし。ビニル傘じゃ役に立たないだろうね。
夢がないわね。
......違う言い方してもらえると嬉しいのだけど。
そうね。ロマンがないわね。
ロマン。そうだね、ロマンチックに欠けているね。
あそこの猫が井戸端会議しているわ。なんて言ったら、ほらね。
なに、笑っちゃいけなかったの。
決まって馬鹿にするでしょ。
もしそれが本当だとして、話は大筋わかりきっているよ。
魚の話じゃないでしょうね。
今日の食事はどこでとりましょうか、どこで待ち合わせしましょうか、とかじゃないかな。
ロマンがないわね。
ロマンチックだけれど、人じゃないわ。恋猫同志よ。
へえ、それで。
だから、とびきり良いレストランでとびきりのコースを予約してみたり、いつもより念入りに毛づくろいなんかして、身だしなみを整えてきたり。
うん、それからどうするのかしら。
それで、フルコースを堪能してデザートが運ばれてきたらプロポーズするつもりなんだよ。
感動的ね。
そうだね。感動的だね。
それで。
え。
あなたはどうするの。
どうしようか。
なによそれ。
一応、指輪はあるんだけど、プロポーズの言葉が思いつかないんだ。
どうするの。
どうしようか。
なによそれ。
結婚しようか。
なによそれ。
え。
夢がないわね。
ロマンがないと言ってくれたら助かるのだけれど。
そうね。ロマンに欠けるわね。ロマンチックじゃないわ。
嫌よ。とても痛そうだもの。
夢がないな。
そうね。夢がないわね。
もう一度だけ言うよ。
飴玉を降らせるつもりなの。
違うよ。結婚してください。
はい。
本当にいいのかい。
嫌だといったらどうするつもりなの。
とりあえずあめがふるんじゃないかな。
どっちのよ。
どうしようか。
なによそれ。
雨と同じ高さから飴が落ちてきたら弾丸になると思うわ。多分。