死に際の人は声を掛けられて何を思うのだろう?
聴覚は最期まで残ると言われていますから声掛けてあげて下さいねー
と言われても何を言えば良かったのか
余命1日の父に
何か話し掛けようとしても、声を出すより先に涙と嗚咽が漏れてしまいそうで全く無理だった。
病室に詰めている家族誰も涙を見せず、明るく努めていた。泣けるものか。
父が危篤前日まで結局余命や死後の話を一切せず、ひたすら治癒を語っていたのも一因だ。
病・死をただ敵視して、生きる未来を語っていた。そんな父に今までありがとう…とは言えない。涙を見せられない。
親戚が「長丁場だから」と貸してくれたiPadでゲームをしつつ、軽口を叩きつつ、荒い呼吸と酸素吸入器の音が響く病室で夜を明かした。
もう呼吸が止まる時も結局声を掛けられなかった。
「お父さん」と声を掛ければ涙があふれてしまう。半ば絶叫のようになってしまう。
そうすれば良かったのか。悪かったのか。
父が死んでもう8ヶ月になるが、ある小説を読んでその時を思い出したので書いてみた。