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この写真を見てて、自分が何度も、犬になる夢を見てることを思い出した。
その夢を見た直後は、そんな夢を見たことを覚えているのに、ワタワタと日常に飲まれていくと、自分が夢の中で犬だったことなど忘れてしまう。
ただ確かにその夢は繰り返し見ている。起きた直後に「また見たなあ」という思いが残る。
別に嬉しいとか悲しいとか、興奮したとか、そういう感情はない。
懐かしいという感じもしない。ただただ自分は犬で、人々の足元を走り抜けていく。そんな夢を繰り返し見ている。
もしかしたら10年くらい前に死んだ愛犬が、僕に憑いてるのかもしれないなあと思う。
そういうことも、悲しいとか懐かしいとか怖いとか、そういう感情ではなくて、単純に「そんな可能性もあるかな」と思う。
犬のほうも別に、思い出してほしいとか、そういう感じじゃないんじゃないだろうか。
淡々と、事実として、僕は夢の中で犬になっている。そしてたくさんの人達の足元を走り抜けていく。
その夢のなかでひとつだけ僕は考える事がある。
それは、「こうやって走ったほうが、速いし安定してるのにな」ということだ。
足だけじゃなく、体全体を縮めて伸ばして、飛ぶように走る。
周りの人は驚いて見ている。みんなは二本足でゆっくり歩いている。
変に見えるかもしれないけど、このほうが速いんだよ。安定してるし。
そうして僕はどこに向かうでもなく、伸びやかに走ることを楽しんでいる。
でも僕は心のどこかで、四足で走るほうが効率が良くて気持ちいいことを覚えていて、それが出来るんじゃないかという気がしている。