2011-02-07

幼稚園児だった頃の私に、ある日母がこんなことを言った。

あなたのお父さんは、現場仕事が好きで、出世したくないから2年ごとに転職をしていたの」

それを聞いて、私は父を誇らしく思った。気持ちをうまく言葉にできなくて、私は「そうなんだ」と相づちをうった。

母は言葉を続けた。

「でも、『もう転職をしないで』と言ったの」

「どうして?」

あなたがこれから大きくなると、お金が掛かるから出世をして貰わなくちゃならないからよ」

今度は母が誇らしげにする番だった。

家庭のためにしたいことを犠牲にする、それは母にとって大変素晴らしいことだったのだろう。

だが私は私は素直に喜べなかった。

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