2008-01-25

裁判リテラシー講座番外 クリプトン社がエロ歌を削除した?>

裁判リテラシー講座を書いてる者ですが、ちょっと気になるニュースが飛び込んできたので言及。

http://blog.piapro.jp/2008/01/post-15.html

これによると、ニコニコ動画に、初音ミクに猥歌を歌わせていたものをうpしていたら、初音ミク制作者サイドが削除を申し入れた、ということらしいです。

しかもうp主デッドボールP氏。個人的にお気に入りな同人音楽家さんの別名義じゃないですか(あんまり知られてないみたいですが)。

あれこれ言説が飛び交っていますが、「ニコニコ、ひいてはCGMの萌芽をつむことになる」といった論調のものが多いように思われます。

ですが、あまり法律論からのアプローチがなかったので検討してみたいと思います。

Fランク法学部生が試験期間中に現実逃避しながらろくに推敲せず書いてる駄文なので、おかしい点があったらどしどし指摘してください><

さらば明日の民事訴訟法

クリプトン社の契約の有効性

クリプトン社は、「VOCALOIDライブラリ使用許諾契約書」で禁止されている

公序良俗に反する歌詞を含む合成音声」の「公開」をしていたので、これを削除したと主張しています。

そもそも、この「VOCALOIDライブラリ使用許諾契約」(以下、本件契約という)ってどうなんでしょうか。

これってみなさんもご存じの表現の自由を犯していませんか?

憲法の保障する「表現の自由」を前提とすれば、公序良俗に反しようがなんだろうが、

何を作ってどう公開しようと自由なはずです。

ここで問題となるのが、憲法は国による国民に対する人権侵害を予防するためのものなので、

クリプトン社と一般人のような、私人の間で憲法に由来する原理を根拠にどうこうできるかということです。

これについては、誰がしても人権侵害人権侵害だし、大会社なら国に比肩すべき権力を有しますから、認めるべきです。

しかしながら、なんでもかんでも憲法が出てくるのでは、規則にがんじがらめになり、私人は自由な経済活動が出来なくなります。

このような考えを私的自治といいますが、これにも配慮する必要があります。

したがって、ある法律行為、ここでは本件契約ですが、が憲法違反するかどうかを論ずるには、

憲法精神を、法律行為を律する法律に読み込むという解釈がされるべきです。

これを間接適用説といい、最高裁の取るところとなっています。

難しい話になってしまったので、簡単な例をあげましょう。

S役の人とM役の人との間で、「MはSに隷属します」という契約が結ばれたとする。

この場合、憲法では奴隷的拘束は禁じられている(18条)ので、このような酷い契約には憲法を適用すべきだ。

うるせーよ、俺たちの合意づくのSM関係に、他人や憲法が口を出すな(私的自治)。

どちらも一理あるので、両者のバランスを取って、法律憲法精神を読み込もうというわけです。

本件では、この契約が有効かどうかは、契約の有効性を律する民法90条の解釈に委ねられることになります。

つまり民法90条のいう「公序良俗に反する」かどうかを判断するのに、憲法精神を読み込めばいいわけです。

あてはめ

では、本件契約憲法違反して民法90条の「公序良俗に反する」かどうかについて簡単に考えてみましょう。

確かに、表現の自由は、表現を通じて人格を成長させる点、それから、憲法自体を支える民主制の根底をなすという点からすると、

非常に価値の高いものです。

しかし、外部行為を伴うものなので他者の人権との衝突は避けられず、「公共の福祉」に、厳格に判断されますが、服することになります。

(たとえばわいせつ文書)。

また本件では、私人国家ではなく、私人同士ですので私的自治が働き、その保障もいくぶん弱体化すると考えます。

たとえば、一般的に表現を禁止するという文言では、弱体化するとはいえ、憲法違反の問題になると思います。

かしここではクリプトン社の製品を買うのに、その製品エロなどに悪用しないで、というものだというのです。

これは、ボーカロイドブランドイメージの低下を防止するため、

また、表現の持つ影響力の大きさから社会への悪影響を防止するためという目的です。

特に、ボーカロイドは新しい技術であり、キャラなのかツールなのかわかりにくく、議論も詰まっていません。

そんな中でエロ禁止という手段を講ずるのは、企業の取る戦略として十分に合理性があると思われます。

ボーカロイド技術を持っているのがクリプトン社だけという点も見過ごせません。

どんな批判も全てクリプトン社に来るからです。

そうだとすれば、本件契約は90条の「公序良俗に反する」とはとうてい言えないと思われます。

結論

以上より、本件契約は有効であるといえます。

よって、当事者は合意して本件契約を結んでいる以上、クリプトン社の措置には道義的な問題はさておき、なんらの法的問題点は存しません。

また、どこかに話題に上っていた、

一方で公序良俗違反の表現を禁止し、他方で訴訟などの責任は負わないという免責規定については、

法律上、ふつうに私的自治の範囲内なので特に問題ありません。

これが賃貸借とか瑕疵担保責任とかだと、圧倒的に有利になってしまうので問題になるんですが、

この場合、訴訟になったら歌を作った奴こそが悪いですから、問題になりようがありません。

常識的に考えて、エロ歌作っておいて「こんなボーカロイドがあるから悪いんだ」なんていう弁解は通りませんよね。

この免責規定はそれを明文化したまででしょう。

感想

こう見てくると、この問題で見捨てられている視点が、クリプトン社の利益という視点です。

クリプトン社は、今までも初音ミク関係して何度か制限を掛けてきました。そういった意味では制限する側です。

表現を制限する奴は悪い奴と思うのは当然かも知れません。

ですが、新たな表現の手段を生み出すクリプトン社もある意味で、表現者といえるのではないでしょうか。

そうするとクリプトン社の立場も、表現する人同様に尊重されるべきではないでしょうか。

そうでないと、先進的な技術を持つ他の会社を萎縮させかねませんしね。

本人のコメントサイトを見るとひたすら平謝りしているようだし、

そもそも他人がとやかく言うことではないかも知れませんね。

彼は同人活動をやっているので、公式サイドからの圧力には慣れっこだと思います。

なのでこれくらいのことでは彼はへこたれないと思います。今後ともがんばって欲しいです。

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