コンセプトは、ニュースなんかで裁判の話が出たときに、そのことをきちんと理解して、
その内容を適切に評価する能力の涵養、です。
「請求が棄却された」という場合と「請求が却下された」という場合があることに気づきます。
また、法廷ドラマでありがちなのが、弁護人が「誘導尋問です!」(ざわざわ・・・)と発語したのに対して、
裁判官が「異議を却下します。」(ぐにゃー)なんていうシーンがあります(刑事の場合。実は民事ではフリーパス)。
先の通り、これは民事手続での話です。
これは、原告が求めている請求がどうなったかという裁判官の終局的な判断、つまり判決の内容なのです。
ちゃんと判決主文に記載される事項です。それぞれ却下判決、棄却判決といいます。
これに対し、請求が通った場合、つまり勝訴した場合は認容判決といいます。
訴訟要件とは、裁判費用を納めていることとか、実際に原告が存在することとかです。
基本的に、備えていて当たり前の、手続き上当然に要求されるモノを欠いている場合です。
一般的な用語法として、「却下」には「問題外」的なイメージがありますが、まさにその通りなのです。
訴訟要件とは、こういう問題外な訴訟を「門前払い」にして裁判所の負担を減らすためにあるのです。
なので通常、こんなアホくさいマヌケな判決はニュースにはなりません。
しかし!! 特別法によって、この訴訟要件が厳しい訴訟があります。第一回に簡単に触れた「行政訴訟」です。
行政事件訴訟法では、行政の運営を円滑にするために、原告となれる資格を絞ったりして問題外な訴訟の範囲を広めているのです。
ですが、問題外の部分が広くなり過ぎると、国民の権利が守られなくなって不当です。
なので行政事件の訴訟要件について解釈をした判決には、それが却下判決であっても注目が集まるのです。
難しい話になるので具体的には述べませんが、興味のある方は「小田急判決」について調べてみてください。
棄却判決は、訴訟要件を満たした上で、請求が成り立っているかどうかの判断にNOを突きつけるものです。
たとえば、金返せという訴訟で、ちゃんと手続は踏んだけど、「そもそもお前貸してねーだろw」という場合です。
請求権そのものが成立しない場合でなくとも、すでに返していた、時効に掛かっているとかの理由でも棄却となります。
要するに、「請求している権利が不存在であったり行使が禁じられていた場合」です(請求に理由がないと表現します)。
一般に言う敗訴判決といったらこれを指す場合が多いです。
500万円の貸し金のうち、200万円はすでに返済されているので、300万円に限って認容します、というようなものです。
この場合は一部勝訴ないし一部敗訴と呼ばれます。
刑事の場合は、マニアックですが、棄却判決は無罪判決、却下判決は免訴・公訴棄却などに対応しそうです。
なお、「上告棄却・却下判決」というのは、ここでいうのとちょっと性質が異なる(しかもややこしい)ので、
項を改めて説明したいと思います。
民事に限らず刑事においても、訴訟に関する裁判官の終局的な判断を判決と言います。
しかしながら、訴訟内においても細かい点で裁判官が判断することがあります。
上記に上げた誘導尋問(刑事)かどうかの判断や、訴訟に補助参加させるか(民事)どうかの判断などです。
これについては、裁判官は「決定」という手続で判断を宣告します(命令ってのもありますが省略)。
基本的には判決の規定が準用されるのですが、いきなり宣告していい、不服申立の手続が異なるなどの細かい違いがあります。
そして、この「決定」についても棄却と却下があるという寸法です。
民事においては、上に述べたことがそのまんま当てはまります。
しかし刑事は問題です。なんと棄却と却下が、「門前払い」か「理由なし」かでごっちゃになってます(!)。
たとえば再審請求について、法令上の方式に違反する場合、却下となりそうなもんですが、決定で棄却することになってます(刑訴446条)。
もちろん、民事のような区別をしているところもあるにはあります。見分けるには、条文を見るしかないです。
誘導尋問の例を振り返ってみましょう。
証拠調べに対する異議申し立てに対する判断は、刑訴規則205条の4以下に規定されています。
それを見ると、民事と同様で異議に理由がないときは棄却、異議が遅延目的など不適法なときは却下とされています。
そうだとすると、ここからは実務の人間でもなんでもない者の一見解ですが、
「適法に異議を述べたが、違法な誘導尋問には当たらない」という場合には、その異議は、
ドラマでよく見られる「却下」ではなく、「棄却」されるべきなのではないかと思われるのですがどうなんでしょう。
テレビ的には、裁判官が強権的なさまを演出するために「却下」と言わせてそうな気がするんですが。
誰か詳しい人いたら教えてください。
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