Slice of life と分類されるアニメ。そのなかでもとびっきりのお気に入りがひとつからふたつになった。高校時代ははるか昔だ。じっさいのところ進学校で男子校、家庭は大人数でややこしく青春などなかった。だからこそかもしれないが、観ているうちにいつの間にかあの頃にもどって登場人物といっしょに笑ったり感動したりどきどきしたりする自分に気づく。失ったもの、はじめから与えられなかったものを再体験するような感覚にひたれた。台詞がおさえ気味で間がながいこと、映像が美しく変転すること、細部まで考え抜かれた仕掛けが、ディスプレイから映し出される光景をまるでじぶんの眼前の光景がと錯覚させてくれ、思考回路と感性の扉を開いてくれている。元気をもらったということのほかに、忘れかけている大切なことを思い出したりもする。泉瑛太も夏目美緒も、子熊も玲子も椎も、自分で決断し自分でアクションを起こした。そこに魔法はなく、ほんとうに必要な時にそばに寄り添ってくれるものとして、たとえば友人や仲間が、あるいはスーパーカブがある。忘れないようにしたいことのひとつだ。