2021-06-25

続・続堕落論(2021)

 六月X日、天皇の名によって五輪中止となり、天皇によって救われたと人々は言うけれども、日本歴史の証するところを見れば、常に天皇とはかかる非常の処理に対して日本歴史あみだした独創的な作品であり、方策であり、奥の手であり、政府はこの奥の手を本能的に知っており、我々国民又この奥の手を本能的に待ちかまえており、かくて政府日本合作の大詰の一幕が六月X日となった。

 たえがたきを忍び、忍びがたきを忍んで、朕の命令に服してくれという。すると国民は泣いて、外ならぬ陛下命令から、忍びがたいけれども忍んで辞めよう、と言う。嘘をつけ! 嘘をつけ! 嘘をつけ!

 我等国民五輪をやめたくて仕方がなかったのではないかかち割り氷を配って酷暑に立ちむかい土人形の如くにバタバタ死ぬのが厭でたまらなかったのではないか五輪の終ることを最も切に欲していた。そのくせ、それが言えないのだ。そして大義名分と云い、又、天皇命令という。忍びがたきを忍ぶという。何というカラクリだろう。惨めとも又なさけない歴史的大欺瞞ではないかしかも我等はその欺瞞を知らぬ。天皇の開催権返上命令がなければ、実際観戦して感染を広げ、厭々ながら勇壮土人形となってバタバタ死んだのだ。最も天皇冒涜する政治家天皇を崇拝するが如くに、我々国民はさのみ天皇を崇拝しないが、天皇を利用することには狎れており、その自らの狡猾さ、大義名分というずるい看板をさとらずに、天皇尊厳の御利益謳歌している。何たるカラクリ、又、狡猾さであろうか。我々はこの歴史カラクリに憑かれ、そして、人間の、人性の、正しい姿を失ったのである

https://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/42619_21409.html

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん