2020-12-13

地元を捨てる

電車で二時間ぐらいの地元に帰った。

用事割合に早く済んだのでどうせならと思って近くの大きくも小さくもない古い遊園地に久しぶりに行った。1000円しないぐらいの入場券を買って園内に入る。ああこんな遊具あったななんて思いながら人もまばらな園内を適当散策してていると、大きい広場のような所に出た。そこにはこの遊園地の目玉なのであろう観覧車があって、小さい頃よく親にねだって乗せてもらっていたのを思い出した。しかし、見渡す限りその広場観覧車は見当たらなかった。そのかわりに、なんとなく間の抜けた音楽の中、無人メリーゴーランドが回っていたのだ。それを見た瞬間、とてつもない寂しさとも侘しさともつかない、言いようのない感情が一気に込み上げてきた。乗る人がいなくても機構は動く。この場所が終わるまで永遠に続くであろう途方もない無意味運動に、これまで感じたことのないような居た堪れなさを覚えて、出口の塗装が禿げかけた門を逃げるようにしてくぐった。ものすごく後ろめたい。地元を捨てるという行為をはっきりと可視化して行ってしまったような気がしたからだ。電車で二時間距離は思ったより遠かったのかもしれない。今さっき届いた郵便物の中に中学時代の友人から結婚式の招待状が入っていた。彼の住所はまだあの町にある。

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